第4部 パネルディスカッション
アダプト・プログラム シンポジウム2008
第4部
パネルディスカッション
河井 事例発表をしていただきましたが、感想や言い足りないことがあれば教えてください。
梶間(大阪府) この休憩中にいろいろ声掛けをいただきました。企業とのかかわりに皆さんご興味を持たれていて、現実にご苦労されているな と感じました。
梶間(大阪府) 私は何年も前からこの担当をしているんですが、今ほどCSR活動が盛んに言われる前までは、やはり行政からの押し付けとい
うので、活動を無理矢理やっている企業が本当に多かったという気がします。その時は、出来るだけ活動の制度紹介にとどめようということを職員の間で話した
ことがあります。ただ、今はそれがなくなり、企業も活動の場を求めているというのが、最近は本当にうれしいです。
河井 その場合、企業にとってのメリットは何でしょうか。CSRだからやるというほど甘くない気もします。担当者が経営陣に、ある
いは企業が株主に説明をする時に、一定のメリットやインセンティブがないと動きづらいような気がするのですがいかがでしょうか。
梶間(大阪府) 企業側は、地域の方とかかわりたいと本当に思っています。それは夜間の騒音苦情などが減るのではないかといった理
由もあるとは思いますが、地域の方と一緒に清掃活動をすることで、地域での企業活動が円滑に行えるというメリットを口にされます。
先日ある企業のCSR報告会に出ました時は、企業も地域貢献、地域で掃除をすることそれ自体が、企業の社員のモチベーションアップになっているというこ
とで、企業の活力が生まれているとかなり熱心に言われました。
河井 金銭的なメリットとか宣伝につながるというよりは、従業員がよくやってくれていると、一緒にやっている人たちから評価される
ことによって、個人として褒められつつも、この会社に勤めていて良かったという流れになるんでしょうか。
梶間(大阪府) その会社は、会社からの命令で清掃活動ボランティアに参加しているのではなくて、本当のボランティアで参加してい
るらしいのです。ですから、社員は清掃活動をすることで、自分自身の幸せを見いだしているということをおっしゃっていました。本当だったらすごいことだな
と思います。
河井 実は企業も人により出来ているわけです。個々の人とどうつながるかが結構大事かもしれないということがあるんでしょうか。
梶間(大阪府)
どうでしょうね。企業の中ではどうか分かりませんが、私がいろいろな企業とかかわる中では、会社としてつながっているのではなく、企業のこの人とつながっ
ているのだという感じはあります。
河井 先ほどの事例紹介で、「私」で売り込め、というお話しがありましたね。
梶間(大阪府) その人が異動してしまうと、つながりが切れてしまうこともありますが。
河井 場合によっては、その人がいなくなったらどうするんだみたいな話があるかもしれないですね。従業員、社員個々のモチベーションを
アップするのは大事かもしれませんが、人と人とのつながりだけで動いていくということの課題もあるのではないかという気がしました。
呑香さんはいかがですか。
呑香(八戸市) 八戸市のクリーンパートナー制度は、予算ゼロの事業ではあるんですが、市長が選んだ重点施策の戦略プロジェクトに
採用されています。私たちも目標を達成したかどうかというところが問われるので、登録数を目標としています。
目標数は、毎年右肩上がりで上昇してきているので、そろそろ限界かなと、すごく控えめな数字を毎年設定していますが、毎年目標達成出来ている状況です。
特にアダプトをやりましょうという積極的な呼び掛けはしてはいないのですが、現状ではうまくいっているのではないかと感じています。
企業の話が出ましたが、八戸市では会社で登録してくださるケースが多いのですが、中には会社内の親睦会で登録してくださるところもあります。そういった
ところですと、多分人事課などが音頭をとっているのでしょうが、まずは海岸線の遊歩道3kmから5kmぐらいを清掃して、その後海水浴場でビールを飲みな
がらバーベキューをしています。こういった活動はホームページでも紹介したいと思っています。
河井 活動紹介は結構積極的にされているんでしょうか。
呑香(八戸市) そうですね。ホームページは私どもが取材にお伺いするわけではなくて、活動の予定や報告を出していただいているの
ですが、その際にホームページへの掲載もしますので、写真と簡単な感想もいただきたいというお声掛けをしています。それを出してくださったところは、漏れ
なく掲載しています。
河井 それは結構出していただけるものなんでしょうか。
呑香(八戸市) 2分の1か3分の1ぐらいの団体が提出してくださっています。
河井 企業との連携では、協賛金といったお金のやり取りが出てくるものでしょうか。
呑香(八戸市) それは聞いたことがないです。市から提供するのはごみ袋で、燃やせるものは清掃工場、燃やせないものはリサイクル
プラザにそれぞれ搬入していただいています。搬入していただくところまでがクリーンパートナーの役割という位置付けで、その搬入の手数料を減免するという
だけです。他に市から金銭に換算出来るものを提供することはありません。
河井 逆に企業側から、イベントに合わせて協賛金を出すということもないんでしょうか。
呑香(八戸市) 聞いたことがないです。
河井 梶間さん、大阪府が企業に一所懸命働き掛けてというのは、お金のこともかかわっているんでしょうか。
梶間(大阪府) そうですね。今大阪府は橋下知事のおかげで、営業が掛けやすいので、お金の話もします。企業からちゃんと金額で提
示してくれと言われることもあるのですが、こちらからお金をくださいと言っているつもりはないですね。例えば、アドプト活動団体にほうきを○本を渡したい
けれども、大阪府にはお金がない。その時に○○会社寄贈とか企業名を入れて、大阪府にいただけませんかというお願いにはよく行きます。
河井 企業のロゴが入っていると、地域活動に熱心だ、頑張って応援しているということを示すことにつながると。行政は企業にお願い
に行っているように見えるけれども、実は企業が地域を応援する時の中継ぎをしているみたいな形で、企業が応援しやすい仕組みを作っているとも考えられるの
でしょうか。
梶間(大阪府) その通りですね。中央環状線の一斉清掃でTシャツをお配りしているのですが、これはグンゼ製のTシャツでして、グ
ンゼにお願いして破格にしていただくという協賛をいただいています。「今まで府費で作って、もらっていたペラペラのTシャツは1回洗ったら駄目だったけ
ど、今回のグンゼのTシャツはいいね」と言われます。グンゼとしてはそういう効果があれば万々歳だということで、継続してご協力いただいています。
河井
つまり、何となく宣伝っていうのをすごく皮相にとらえちゃうと、名前が出ればいいのだと思いがちだけれども、実はその製品の優秀さを示す場所でもあると。
買ってもらわないと、本当にグンゼの製品がいいかどうかは分からないと思うんですが、実際にそれを買ってもらうわけではなくて、グンゼが行政という仕組み
をうまく使って提供することによって、場合によっては、次に買う時にペラペラよりは少し値段が高くてもグンゼ製品を買うかもしれないというぐらいの勢いに
なるといいなということですね。
梶間(大阪府) そうですね。色々な業種の企業と連携しているので、例えば、グンゼからこの協賛のTシャツをもらった企業が、自社
のユニフォームを作る時に、グンゼにお願いするとか、いろいろなつながりが出来れば大阪府も役に立っていると思うのです。
河井 清掃が終わった後に飲んだサントリーが本当においしいというと、サントリーの方が喜ぶみたいな。
梶間(大阪府) そういったコラボをしていくことが、行政の役割かなと思っています。
河井 どうしても行政が企業に行くというと、自分たちのためにお金をくださいという形で考えてしまいがちですが、実は地域の中に企
業が入ってくれるためのきっかけを作っていると考えると、自分のやっていることの意義みたいなものがしっかり分かるから、胸を張って頭が下げられますね。
梶間(大阪府) そうですね。お願いに行くこととか、お金をもらいに行くことに抵抗がなくなります。
河井 呑香さん、先ほどいつの間にか登録数がどんどん増えていくという話がありましたが、そんなうまい話があるんですか。
呑香(八戸市) 本当にあるんです。私も実は4月から担当になって、前任者からもう登録数は伸びないだろう、ただ、戦略プロジェク
トなのでよろしくと引き継ぎを受けました。
しかし新年度早々4月、5月のうちに今年度の目標を達成しました。逆にどうしたのかなというのが、本音の感想でもあります。
八戸は工業都市で、工業団地の真ん中に産業支援施設のような第三セクターがあります。
その産業支援施設が音頭をとる形で、工業団地で一斉に清掃活動をしているという事例があります。全工業団地に声掛けをすることもあって、ほとんどすべての
方が参加してくださいます。個々に参加してくださった工場の方々が、今度は会社として応募をしてくだされば数は増えていくし、工業団地の分譲も進んでいる
ので、他社もやっている、あるいは地域に貢献したいということで参加してくださっていると思います。
河井 他もやっているのに、うちがやっていないという状況を作ると?
呑香(八戸市) そういうわけでもないですが、工業団地全体でやる機会があるので、それであればうちでもやれるのではないかと考え
ていただいているのではないかと思います。
河井 行政が個別にどんどんPRをするというよりは、活動をしている企業が、意味や、その魅力、従業員のモラルアップにつながる、あるい
は自分たちの製品にプラスになることを、他の企業に伝えてくれるのでしょうか。
呑香(八戸市) そうですね。私の前任者の段階で、そういうものが出来ていたかもしれません。
河井 それは面白いですね。どうしてもPRというと、一所懸命これはすごいことだ、いいことだということを言い続けなければならな
いと考えられがちなのですが、実は利用者が新しいPRの主になる。新しい人間関係を作ってくれる。工業団地のような一定の情報が流通しやすいということも
関係しているんでしょうね。そういうツールがあると、また更に面白いかもしれませんね。
きっとホームページなんかも、そういう役に立っているかもしれませんね。
呑香(八戸市) ホームページの目的は、まず第一にそこだと思います。
河井 こんなにいいことをやっているよという情報が、実はAという企業とBという企業をつなげていくためのツールという位置付けも可能だと。実はそれを意
識されているということですか。
呑香(八戸市) そうですね。
河井 勝手に増えているわけではなく、下準備や仕込みをいろいろしているからこそ増えているのかもしれないということですね。どう
してもPRという言葉は、狭くとらえてしまいがちですが、PRの連鎖みたいなことが実はあるのだというのは面白い発想だと思います。
紅邑さん、何か追加でご発言はありますか。
紅邑(せんだい) 仙台市のまち美化サポートプログラムというのは、他の自治体と同じように契約をするということなのですが、仙台
市では市長と団体が契約をすることになっています。それで清掃活動を実施する区域や、活動を行う日、計画書をちゃんと出すことになっています。活動予定表
を市長に提出して、1年以内にそれを継続して実施する。要するに1年間単独じゃなくて、継続してやるということも条件になっているんですね。
回収したごみは、事前に環境事業所に連絡しておくと、取りに来てくれます。それから、ごみ袋を提供したり、火ばさみなどの清掃用具をお貸ししたりして市
が応援して、バックアップ体制をちゃんと整えているということもあります。
数えてみますと、121団体のうち企業が80ぐらいを占めているんですね。八戸市のように増えているわけではないとは思うのですが、行政から委託を受け
る事業の入札では、いろいろ出す書類の中に、社会貢献活動をやっているかどうかを書く項目があるそうです。一番身近な会社の近くでの清掃活動は実施しやす
いので、このアダプト・プログラムに登録しているところが増えているそうです。またそれが社長さん同士の口コミで、ここのところ増えてきているのではない
かと思います。
河井 口コミ発生装置って何か作られていないんですか。
紅邑(せんだい) 八戸市のお話を聞いて、2000年頃サンフランシスコへ企業の社会貢献調査に行ったことを思い出しました。そこ
では、公民館やお家の修理をするという、「4月のクリスマス」という名前のNPOボランティア活動があったのですが、それに企業の人たちがたくさん参加し
ていたんです。専門的に協力する企業と、日曜大工程度にお手伝いをするボランティアが1チームになって、全市一斉にやるんです。
企業の栄枯盛衰が激しいところで、その地域に新しく参入する企業では、雇用された人が4月のクリスマスの活動をうちの会社はやらないのかと聞くそうで
す。また、お揃いのユニフォームとかTシャツは企業がお金を出します。企業は社員が自発的に活動したいという社会貢献活動をやらないと、ちょっと社員に格
好が付かないじゃないですか。それでどんどん増えていくという話を聞きましたので、これは似た感じかなと思いました。
河井 口コミ発生装置って、結構作れるのではないかという気がします。大きなものじゃなくても、小さなカードを作るというのもいい
かもしれません。
少し研究しているのですが、携帯電話は口コミをすごく発生させやすいんですね。いくら一所懸命これが大事だって言われてもピンと来ないけれども、現物や
写真を見せる、あるいはさっきのワケルくんみたいなキャラクターがパッと目に入る。これはアダプトなんかでも使える仕組みなのではないかと思います。
せんだいのアレマ隊とサポートプログラムというのはうまく組めるのではないかと思うのですが、その点いかがですか。
紅邑(せんだい) 実は最初にアレマ隊が誕生して、2〜3年後にまち美化サポートプログラムというものが誕生したのですが、市民に
とってはどんな形であれ一番参加しやすい仕組みで活動するわけです。ただ、残念ながら行政は担当が区分けされています。更に、仙台にはビラトルズというビ
ラをはがす人たちがいたり、まちのパトロールをするアイ・アイキンギョパトロールといったものがありますが、分断されているんですね。
廃棄物管理課が担当している事業にサポートプログラムとアレマ隊と両方あるんですが、もう一つごみの集積場管理を委嘱しているクリーンセンター推進委員
という事業があります。まち美化活動の中の選択肢の一つという扱いにすればいいと思うんですが、それぞれ縄張りみたいなものがあって、うまく連携がとれま
せん。
市民の目線で見ると縦割りの弊害が出ている感じがします。
河井 行政というとどうしても悪いイメージで縦割りということが言われますが、大きな問題ではないと考えているのか、あるいはこう
乗り越えているという事例がおありなのか、ちょっと教えていただけませんか。
呑香(八戸市) 確かに縦割りになっています。観光地の清掃活動に関するものは観光課が担当し、クリーンパートナーで出たごみは、
市だけじゃなく広域事務組合が処理しています。他にも清掃事業所とか、リサイクルプラザといったところが担当しています。しかし、その都度連携し、円滑
に、過密にすれば、それはそれでいいのではないかと思います。
河井 問題はそこだと思うのです。連携が出来ていればといい話ですが、連携が出来ていないのではないか、必ずしも十分ではないかと
いうことなのかもしれない。八戸市ではサラッと連携が出来ているとおっしゃりますが、具体的にはどういうことなんでしょうか。
市役所内なので、パッと声を掛け合っているということなのか、それとも連絡会があるのか。行政はそこまで意識していないんだけど、市民が同じだからなの
か。そこら辺はいかがですか。
呑香(八戸市) 最初の立ち上げの時は検討会がありましたが、それが一度動いてしまえば、あとは電子メールのやり取りだけになって
いますが、これまでの連携もずっと続けられています。例えば、観光課に市民団体から清掃活動の申し入れがあった場合、環境政策課に照会があって、もしク
リーンパートナーに登録しているのであれば、その活動としてやってもらいたいと。登録していない団体であれば、特にクリーンパートナーに誘導することもな
く、観光課で清掃活動をしてもらいます。住み分けを設けるわけでもないんですが、その都度電子メールなり電話なりで通常の連絡業務を行っています。
河井 どこかの制度に一元化するのではなく、それぞれ持っている制度をうまく活用するということですね。もともと目的は何かという
と、まちが綺麗になること。それだったらいろいろな仕組みがあってもいいじゃないかということ。重複している部分もあるかもしれないけれども、それぞれの
課がまちを綺麗にする仕組みを持っている。それがうまく回っているということですか。
呑香(八戸市) そういうことだと思います。
河井 本来は一つの制度として動かす方がいいという発想ですが、実はアレマ隊とサポーター両方あるから、切り替えながら出来るのだ
と思ったんですが、そこら辺はいかがですか。
紅邑(せんだい) 私もそう考えているんです。ですから、綺麗にしたいコース、数えてみたいコース、考えてみたいコース、その4つ
目にまち美化サポーターコースでいいんじゃないかと、担当課職員とは話しています。でも、その上に行くと、縦割りのままでいということになってしまうんで
す。毎回担当課では、苦労をされているんですが、組織全体でそこを組み替えることは難しい。実は組織の問題だけではなくて、規定の仕方が違うことも問題に
なります。まち美化サポーターは、ごみだけじゃなくて、除雪や除草という活動もあるんですね。しかし、アレマ隊は、基本的に散乱ごみだけなので、だから一
緒に出来ないということが原因で、統合がむずかしいということで引っ掛かっているらしいんです。
なかなか行政というのはそこのところがまじめなのか、乗り越えて臨機応変にやりましょうということにはしにくいようで、そこがもどかしく思うところで
す。
河井 八戸市には臨機応変さがあるということですか。
呑香(八戸市) そうですね。あまり大きな目標を持っていないということが、いい方向に働いているのではないかと思います。もう現
状で十分にやれているのではないかというので、特にこれ以上やらなくてもいいと思っていれば、うちだとか、うちじゃないとかということはないと思います。
河井 情報を出してから最初に取っつきやすいものを選んでもらって、あまり細かく厳格に考えずに、とにかく取っついてくださいと。
それが面白ければ、ワンステップ上げてください。それがうまく仕組みとしてで考えられていると、次のステップに移っていけるような気がします。
そういう意味では、アレマ隊の拾う・数える・考える・まち美化、その四つっていうのはうまく出来ていると思います。まず拾うだけから始まり、ちょっと拾
うだけでは面白くないからというので次の活動につながるというのは、ちょっと面白いなと思います。
大阪府では縦割りはいかがですか。
梶間(大阪府) うちはうまくいっていないので、よく問題にされて、住民からもそのような声をいただくことがあります。活動をして
いる方には、ここは市道でここから府道とかあまり関係がなくて、その地域を綺麗にしたいという思いがあるだけです。ですから、出来るだけ縦割りの中でも連
携しようということはしています。
今までのお話を聞いていて、大阪府が恵まれているなと思うのは、横軸を通せという指令が上司から下りてきていることです。例えば私は、道路部門ですが、
川の仕事をつなぎに行っても業務外だとは言われなくて、むしろつなぎに行けという指令が来ますから本当にありがたいです。
ちょっと事例を紹介しますと、大手企業が全ての支店でアドプト活動に参加したいという場合、支店はいろいろな地域にまたがっていて、大阪府が管理してい
る道路もあれば、市町村が管理している道路もありますが、それを私が全部窓口をさせてもらえたんです。
今までなら、きっちり管理区域を分けて、この分はアドプト・リバーでやってくださいとか、この部分は○○市のアドプトとしてやってくださいという形で分け
ていましたが、窓口を一元化すればいいじゃないかという上司からの指令もあって、それはありがたかったかったです。
河井 それはトップの指示が大きかったですか。
梶間(大阪府) そうですね。
河井 トップから十分な指示がない自治体が大変だという話になるかもしれませんが、逆に言えばそういう人を市民がしっかり選べとい
うことかもしれません。
そういう意味では、広域自治体としての都道府県と、基礎自治体としての市町村との関係というのもあるのでしょうか。青森県との関係は八戸市はどうです
か。
呑香(八戸市) 一番大きく出てくるのは河川敷の清掃活動をやる時ですね。八戸市は2本の河川の三角州に位置していまして、一方は
一級河川で、もう一方が二級河川で、国管理と県管理に分かれています。私たちの制度は、公共施設であれば全部含まれるのですが、それぞれ県や国が管理して
いるのであれば、清掃活動の費用等をそれぞれの管理者が持つべきではないかという議論もかつてはあったようです。
その際には、三者協働でやりましょうということになりました。三者というのは、一つは清掃活動をしてくださる団体、もう一つは私ども八戸市で、市はごみ
袋を提供し、発生したごみを無料で受け入れる。もう一つの県や国は、クリーンパートナーが集めたごみを、それぞれの搬入場所まで車を出すという形で、それ
ぞれ分けて現在やっています。
河井 それは市道でも県道でも国道でも、どこでやるかは関係がなく、役割分担しているということなんですか。
呑香(八戸市) そうですね。国道であっても県道であっても何ら変わらず、十把一絡げに公共施設になっており、特に三者協働で行
なっているのは河川敷だけです。
河井 大阪府は、市との調整が難しい関係ではないかと思うのですがいかがですか。
梶間(大阪府) 難しいですね。大阪市は政令指定都市で、市内に大阪府道はないので、連携が必要なところも今のところはあまりない
です。その他の市とは、やはりいろいろなところで課題が出てきます。
河井 大阪府はアダプトサインは出すんですか。
梶間(大阪府) 府がサインを出すようにして、市には基本的にごみの回収をお願いしています。
河井 そこの住み分けは出来ていますか。
梶間(大阪府) 一部の市町村で例外はありますが、基本的には出来ています。
河井 八戸市はどうですか。アダプトサインは出しているんですか。
呑香(八戸市) 出しておりません。
河井 出さないことでトラブルが起きないからとか?
呑香(八戸市) それはあるかもしれないですね。あまり提供するものが多くないからかもしれません。
河井 アダプトサインを出すことによってやる気が出るという意見もあると思うんですが、どうお考えになりますか。
呑香(八戸市) 予算が計上出来るかどうかだと思います。これまでサインを出そうという議論になったことはないです。ただ、団体に
よってはのぼりを自分たちで作っているところもあります。
河井 食環協から何かありますか。
宮本(食環協) 今日の事例発表の中で、2点ほど皆さんのご意見を伺いたいことがあります。
市民団体アンケートの中で、今後のアダプト・プログラム普及推進にあたり、意識の向上が必要だという答えが、2005年代では二十数%だったのが、今回
はわずか数%にとどまっています。これは市民の意識が、美化・協働といったことは言わなくても分かっているということの現れなのでしょうか。どうお考えに
なるかお聞きしたいと思います。
紅邑(せんだい) 10年前ぐらいは、モラルの向上という声は結構多かったんですが、最近ワークショップをやると、まず動くことだ
といった声が割と大きくなってきていると思います。動く市民が増えてきたということなのではないでしょうか。
環境教育と言われてから10数年たったかと思いますが、仙台でのイベントでは、若い人たちのグループは、自発的に会場のごみ分別を推進しましょうという
ことを提案してきて、更に出たごみも、リサイクルに回すようにしています。そういったアクションというのは、若い方が自主的にどんどん出してくるので、環
境に対する意識も、アンケートに現れているのではないかと思います。
河井 確かに環境についての意識付けはいろいろなメディアや公演で話がされるようになりましたから、変わってきているかもしれませ
ん。
梶間(大阪府) 市民意識の向上をしても、アドプト活動をするわけじゃないく、市民意識は向上しているけれども動けない理由があっ
たり、活動に結び付かないという理由で差が出たのではないかと思うんです。
アドプト活動につなげるためには、活動のメリットや、活動をすることで幸せを感じるような仕掛けが必要ではないかと思います。
河井 一般論として意識を高めることは必要だけれども、それよりも意識を高めるためにどういうことが必要なのかをもっと明確に考え
始めたということでしょうかね。
会場から面白い質問が出ていますが、多くの団体を有していると、すべての団体を公平に扱うのは大変、積極的・消極的な団体があるのではないかという質問な
のですがいかがでしょうか。
呑香(八戸市) 申込みは申込書を1枚出していただくだけです。実際に活動をしたかとか、年に何回活動するか、何人で活動するかと
いうのは、それぞれの団体に任せきりなんです。
あとは、ごみ袋の提供や、ホームページの掲載、記者クラブへの投げ込みをしているぐらいです。そういったことで、結果的にすべての団体に対して一律平等に
なっているのではないかと思います。
河井 自発性を意識されているんですね。行政はしっかり管理してあげないと活動をやらなくなるのではないか、勝手に終わるんじゃな
いかと心配しがちですが、勝手に終わってもかまわないということですね。
呑香(八戸市) そうですね。182団体のうち、実際に毎年1回以上活動している団体は半分程度ではないかと思います。でも、だか
らといって、抜けてくださいということもないです。過去に1件だけ、健康上の理由からもうやめますと申し出られた個人で登録されていた方の例があって、そ
の際にはお礼状を出しました。登録だけして幽霊部員というのも、しょうがないのではないかとは思っています。
河井 逆に言うと、その思いを持って申し込みはしてくれた、これが大事だと考えられて
いるということですか。
呑香(八戸市) そうですね。結果的に幽霊部員になったとしても、1回も活動をしていないという団体はないと思うので。
河井 結果的に公平になる仕組みですね。積極的に支援するとしても、手を挙げたところを支援するということであれば、それは公平だ
ということですよね。
梶間さんはいかがでしょうか。
梶間(大阪府) 手を挙げたところに支援を厚くするという意味ではなく、関係が深くなるというところでも公平だと言えるのではない
かと思います。大阪府の場合、関係が途絶えている団体を出来るだけなくそうということで、連絡・確認を入れるように心掛け、出来るだけ職員も出向いてい
く。幽霊の場合、責めるつもりはないんですが、登録解除というケースもあります。
河井 行政自らが関係を切っていくという形ではなく、相手から離れていくならそれは仕方がないと。関係については公平・平等に持っ
ていくということですね。
宮本 自治体アンケートで、アダプト制度が市でどのように位置付けられているかを今年初めて伺いました。もうちょっと数字が高いの
ではないかと思っていたのですが、明確に位置付けされているところが、県36%で、市町58%でした。そのあたり、いかがお考えでしょうか。
紅邑(せんだい) 仕組みとして認めてもらっている方が、推進しやすいと思います。特に退職した後の男性の方が多いんですが、清掃
活動をしていると物好きだ、変わり者だと言われたりすることもあるというのです。
そんな時、アレマ隊員証を切り抜いて、帽子に挟んで活動をする方が出てきました。仙台市が認めているアレマ隊なんだということが分かると、やっぱり活動し
やすいそうなんですね。その後、仙台市は貸し出し用の腕章を作りました。
河井 面白いですね。市民を応援する形をしっかり見せてあげる。アレマ隊だということで、自信が持てて、続けようと思える。重要か
もしれませんね。
呑香(八戸市) 八戸市のクリーンパートナーは環境基本計画の中で、施策の一つとして記載してあります。載せてはいますが、特に良
かったこともないのではないかというのが率直な感想です。
梶間(大阪府) 恥ずかしながら、そのような基本方針などはありません。大阪府は現場主義で、計画策定の基本方針などを作る部署は
現場を知らない遠く離れたところにあるようなイメージです。基本方針などはないですがうまくいっています。
河井 市民にはやる気がある。それを放っておくとしぼんでしまう。それをどうつなげて連鎖させるのか。自分の住んでいる地域を綺麗
にしたいと思っている人たちの自発性を継続・連鎖させる仕組みを行政やNPOが用意するとうまくいきそうな感じがしますね。
今日の皆さんの話の中では町内会とか自治会という話出てきませんでした。これらの組織はどう位置付けているんでしょうか。
梶間(大阪府) 自治会もアドプトの1団体として、仲良しグループと同じ扱いになっています。
河井 それは問題だという意識ですか?
梶間(大阪府) 実は自治会と言いながらも、自治会の中の仲良しグループとか意欲のある人がチームを作ってやっています。それがま
ずいことだとは思わないですが、あまり意識をしたことはなかったです。
河井 八戸市はいかがですか。
呑香(八戸市) クリーンパートナーで提供しているごみ袋自体は、そもそも町内会の清掃活動や、環境美化協議会の秋の一斉ごみゼロ
運動で使うための予算で作りました。クリーンパートナーであろうと自治会であろうと、清掃活動をする時のチャネルが多いというだけで、特に住み分けを意識
しているわけではありません。
河井 紅邑さんはどうお考えですか。
紅邑(せんだい) 仙台市の町内会はとてもしっかり活動をして、町内会清掃を月に1回行わなければいけないんです。町内会とは別
に、アレマ隊として、でも町内会の有志でやりましょうという形でこの仕組みを活用しているところもあります。町内会全員でアレマ隊になっているところもあ
るし、有志でなっているところもあるんですね。
あるところは、有志でグループを作り、まち美化活動だけじゃなくて、リクレーション活動も行なっています。これを町内会の方が空き地の掃除や、除草をい
くらから払うからやってくださいとお願いして、その費用を活動費に充ててジャンパーを作ったという例もあります。
あとは、町内会と子供会とPTAが一つのグループになって、アレマ隊登録をしたということもあります。市民が自由に活動の仕組みを使って、自分たちがや
りやすいようにしていく力を持っていると思います。
河井 町内会・自治会が、その地域について関心を共にしている人たちの集まりだといえば、NPOなどと同様に、広い意味でのノンプ
ロフィット組織の一つかもしれない。
大阪府の課題が二つ出されました。成功体験の見える化と、ビジョンの共有ということなのですが、このパネルディスカッションの中では、ビジョンの共有は
本当に必要なのかという意識がある。他方で、これがなければアダプトはこれから未来に向かっていかないという意識もある。だとすれば、どう整合性を取るの
か考えてみたいと思います。
梶間(大阪府) 実は昨年度のこのシンポジウムの基調講演の中で、アドプトの活動が、綺麗にすることだけで終わってしまったら駄目
だと言われました。今しているこの清掃が、将来的にこんなまちをつくっていくためのものであるというビジョンが必要であると。
この活動は掃除をすることではなくて、まちを作る誇るべき活動だということをもっと分かりやすく伝えられないかというところが課題なんです。
河井 会場からの質問の中にも、アダプトの意義や価値をどのようにとらえているかというものがあります。ビジョンの共有、これはま
ちづくり活動につながるのだと全員が思うことが本当に大事なのかということですね。
実はまちづくりにつながるのだということを意識付けることを、行政、あるいは中間支援NPOがしっかり踏まえていればいいのかもしれないと思ったもので
すから。
呑香(八戸市)
団体や企業が活動をする時には、綺麗な方がいいじゃないかという、意識共有はしていると思います。それをビジョンと言うのか分かりませんが、結果的には、
環境基本計画でうたっている、潤いと安らぎが感じられる都市環境の形成につながっていくのかなと思います。
紅邑(せんだい) 私は別に共有しなくてもいいと思うんです。行政ってビジョンの出し方が下手だし、もしかするとビジョンを持って
いないのかなとすら思うことがあります。ビジョンを持たずに、ただアダプト・プログラムを実施するということは、やはり問題だと思うので、人口や規模に応
じてビジョンを立て、まちづくりとどうつなげていくのか市民の声をどう吸い上げるか。そういった仕組みも持った方がいいと思いますが、そこで私たちのよう
な中間支援が役に立つと思います。そういったところと連携していくことで、市民との双方向、企業との双方向な取り組みがスムーズに展開出来ると思います。
河井 あるべき地域イメージというのは、少なくとも行政は持つべきですよね。
アレマ隊は単純に綺麗・汚いではなくて、同じ地域に住んでいる人に対して気を使いましょうと。こういう地域であることが望ましいと思っているのだという
ことを伝えようという話だと思います。
その中で、アダプト・プログラムの評価の仕組み、評価の考え方というのは、どのように考えているか教えていただきたいと思います。
梶間(大阪府) 出来ていませんね。評価の仕組みが出来ていないことが課題です。
河井 評価をする時には、一定の評価基準、及び何が達成目標なのかが明確にされていない評価は出来ないと思うんですが、評価基準が
ないのでしょうか。それとも評価する最終目標がないのでしょうか。それとも評価するツールがないということでしょうか。
梶間(大阪府) ツールの要望として、知事表彰というニーズもありますが、長ければいいのか、濃ければいいのか、回数が多ければい
いのか、活動範囲が広ければいいのか、そういったことではないような気がして、評価出来ないんです。
呑香(八戸市) アダプト・プログラムを実施してくださったこと自体が、評価に値することではないかと思っています。その中で具体
的にどういう活動であったというのはそんなに大きなことではないのかなとは思っています。
紅邑(せんだい) 評価というのは何のために評価するのかとか、その評価したものをどう使うかによって、評価の仕方とかは違ってく
ると思います。
我々はポイ捨てごみからまちづくりを考えるというところから始まっているんですが、実はごみを拾った市民が1人でも多くいたということは、そういうことに
コミットする可能性のある人が増えたということとして評価をしてもいいのではないかと思っているんです。
私たちは1回ごみを拾った人は絶対に捨てないと考えていますが、市民が自分のまちのことに関心を持つということは、結果的に防犯とか安全・安心につなが
るぐらいの意義があると思います。
宮本(食環協) 食環境は、10年以上前から日本国内にアダプト制度を普及させることを一つの目標としてきました。今まではシンポ
ジウムなどで情報提供する、あるいは情報交換をしてきましたが、これからは違う形で質的なものを提供するということが、課題だと思っています。
河井 評価というのは単純な広がりだけではなくて、深さも必要だというお話がありました。一方で、広がりが実は深さにつながってく
るのだという紅邑さんのお話もありました。
実は評価って、いいか悪いかということよりも、コミュニケーションツールのひとつですよね。なぜこうなったんだろうと振り返ったり、意見交換したり、どの
ような評価になるかを考えることが大事なのかもしれません。
今日のシンポジウムに参加をされて得たものがあればお聞かせください。
紅邑(せんだい) もっともっと私たちが取り組んでいることは楽しいよとアウトプットしていくことが、ものすごく重要だと思いまし
た。
呑香(八戸市) 地域づくりということはあまり強く意識することがなかったんですが、アダプトが重要な役割も持っていると言うこと
を今日あらためて認識しました。今後のプログラムの運営に役立てていきたいと思います。
梶間(大阪府) すごく勉強になりました。休憩時間中にいろいろお声掛けをいただいて、名刺交換をさせていただいたことが、今日の
一番の収穫かなと思います。
大阪のアドプトが10年目を迎えるというので、ちょっと肩肘張りすぎている感じがありましたが、いろいろなお話を聞いて、自然体でいいかなと思いまし
た。
宮本(食環協) 今日はありがとうございました。昨年からアダプト・プログラム研究会というものを立ち上げまして、自治体の皆さん
に集まっていただいて、今いろいろな意見交換をしているところです。昨年はほとんど机上での意見交換だったのですが、今年は実際に自治体を訪問して意見交
換を行い、課題や成功例もろもろ検討しようということで、河井先生に座長になっていただいております。
今日のシンポジウム、あるいは研究会の成果を、ぜひ皆様方にもご提供させていただきたいと思いますし、そのための研究をするのが、私ども食環協の役目、
務めだと考えておりますので、今後ともご指導をよろしくお願いします。
河井 オーディエンスの方々も含めて、パネリストの方々の協力を得て、私としてもすごく勉強になったパネルディスカッションでし
た。どうもありがとうございました。
第4部 パネルディスカッション
