第2部 基調講演
アダプト・プログラム・シンポジウム2011
第2部
基調講演
「きれいなまちづくりのために私たちが出来ること」
講師:フリーキャスター・気象予報士/食環協アドバイザリーフェロー
根本 美緒 氏
アダプトに関わるきっかけ
ご紹介いただいた根本です。皆さんはお天気お姉さんというイメージをお持ちだと思いますが、今は天気予報よりもアダプト・プログラムに興味があります。アダプト・プログラムと言ってもあまり知らない方が多くて、私も実はアドバイザリーフェローに就任してからはじめて知ることができた状態です。
そもそも私は、大学時代にペットボトルのデポジット制度を取り入れたリサイクルの研究をしました。この制度には意識というものが大きくかかわっていて、日本でやるのとドイツでやるのは大違い。例えば、ドイツならデポジット(返金額)1円でもみんなリサイクルに回すのに、日本だと5円でも10円でもなかなかリサイクルしない。私たちの意識が値段さえも変えてしまう、結局人の意識を変えるにはどうしたらいいのかということになります。
東北放送に入社して天気予報を担当することになりましたが、環境問題なんて大きなことを言いながら、天気すら全く知らないことに気付き勉強しました。3年間掛かりやっと気象予報士の資格が取れました。勉強してみて、ごみ問題も気候変動も同じだなと思いました。そんな中、私はアダプト・プログラムに出会ったわけです。
アダプトに参加して
うちの子はよく歩くのですが、子どもが自由に遊べる場所は意外と少ないですね。近所にあるお気に入りの芝生の公園には、綺麗なお花が咲いています。このお花のおかげでチョウチョやトンボなどの虫がいっぱいきます。管理も行き届いていてすごいなと思っていたら、実はこの公園、かつては公衆トイレには悪臭が漂い、寝泊まりしているおじさんたちが多く、子どもが寄りつかないような場所だったそうです。実はこれがアダプト・プログラムのお陰だったのです。
アダプトとは養子縁組みたいなものです。区が管理する公園をお子さんに喩え、それを近所の人たちが親として預かって育てます。都が管理する大きな公園もありますが、まちの公園はほとんど区が管理していて、その公園を住民がサポートすることで維持されているわけです。この公園でのアダプトは、お花や芝生、清掃用具、サインボードを区が提供します。そして住民の方がお花の水やりや植え替え、掃除などを行い管理にしているわけです。
実際私も活動に参加してみて、アダプト・プログラムが重要な役割を果たしていることが分かりました。熱心な会長さんは、もともと植木が好きだったそうですが、住民の方が分からないことも教えながら活動しています。また、婦人会の方々がパンジーを植えたり、区の職員の方がボランティアで参加したりしています。また、植え込みのハーブは近所のイタリア料理店のシェフが選定してお料理に使うなど、究極の地産地消がここに成り立っていました。また、ミントはミントティーにしたらいいよと、みんなで持ち帰るなど近所付き合いにもなっています。子どもにも声をかけてもらえるので、アダプトを通じて地域とコミュニケーションを取ることが出来ることを改めて感じました。
実際にどういうことをしているかというと、夏は芝生に1日3回水まきをし、冬は水をあげすぎると枯れてしまうので放置するそうです。パンジーやチューリップの球根などには水をあげます。芝生の管理はすごく難しく区が担当しています。自転車やスケボーで踏まれるだけでも良くない。でも、そもそも人が入るための公園ですから、一部区画を入らないようにして整備し、そこが直ったら次にずらしながら育てているそうです。養子縁組とはいえ、産みの親と育ての親が相談をしながら子どもを守っているということが分かりました。しかし区の職員の方に伺うと、意識の高い地域とそうでないところと、温度差があるそうです。お花を植えても管理が出来ないとか、芝生でなく砂利にしようと話がまとまってしまうそうです。こういうことを私たち住民は全然知らずに日頃生活しています。
この公園以外にも、区はいろいろな活動をしています。環境教育のための公園には風力発電が付いていて、発生した電気を公園内で使っています。また、子どもが砂を食べてしまうので、雑菌が少ない白い砂を砂場に入れているところもありました。親は子どもに安全に遊んでほしいと思っているので、そういう区の試みもすごくいいなと思いました。子どもたちが大きくなった時に分かる時が来て、それが一つの環境教育になると思いました。 他にも、座面を外すとかまどになるベンチや、非常用のトイレとして活用出来るマンホールなど、住民としてありがたいなと思うものがありました。
これまで、ポスターを見て「あなたにも出来る美しい綺麗なまちづくり」と言われても、ごみを捨てないようにとか自転車で入らないということは想像が出来ても、どうやって参加したらいいかということが全く想像付きませんでした。それがアダプト・プログラムを知った上で考えると、活動に参加することも大事なことですし、それを同じマンションの人に教えてあげるとか、意見を集めるとか、出来ることがいろいろあるのだなと感じました。
イギリスに友達がいるのですが、この間久しぶりに日本に帰ってきて、日本は本当に歩きづらいと言うのです。イギリスではレディファーストのように子どもファーストが成り立っているそうですし、公園もほとんど芝生です。それを保つのは住民だということも当たり前になっているそうです。日本はいつから人任せになったのかなというのを考えさせられました。私たちが一つひとつ出来ることがあると思いますので、ぜひ皆さんもこの話を参考に考えていただければと思います。
質疑応答
Q. アダプト・プログラムはごみを綺麗にするというイメージが強いですが、お話のように人と人の関係を作っていくためのきっかけになると考えてもいいのでしょうか。
A1 最初はごみをなくそうとか、空き缶を拾おうという意識から入ると思いますが、結果的には公園が綺麗になるだけではなく、新しいコミュニケーションが生まれて、ひいては環境教育までつながるのだと思います。それがアダプト・プログラム制度の一番いいところだと思います。
以前、大阪では冷蔵庫やテレビの散乱地帯に羊を飼ったと聞きました。羊がいるとごみを捨てなくなるだけでなく、草を食べてくれるから地面の整備にもなる。その上、羊に餌をあげるために子どもたちが参加するようになり、ご年配の方々と子どもたちのコミュニケーションの機会が生まれたそうです。
Q. 先日江戸川区の西小岩小学校に出張授業をしていただきました。次世代教育の一環でお願いをしたわけですが、子どもたちと接してどのような印象を持ちましたか。
Ans. 西小岩小学校はみんな一生懸命でした。校長先生が環境教育に力を入れていて、リサイクルボックスが教室に置かれているなど、日常生活の中でリサイクルが自然に出来るような仕組みがありました。それが自然に出来るというのが、子どものいいところだと思います。子どもがやっていれば、親はやらざるを得ないということがあると思います。小学校の環境教育はとても大事だと改めて思いました。
例えば、公園に太陽光発電とその電気で動く遊具があって、遊びながら勉強出来る場が作れるようになったらいいと思います。これからは、自分たちで電気を作る時代が来ると思っているので、そういう流れの中でまちづくりを変えていかなければいけないし、そこでどういう教育をしていくかがまた一つテーマになってくると思います。
Q. アダプト・プログラムを進めている中で、集まりが悪かったりマンネリになったりすることがあるのですが、こうやったら人が集まるのというご意見はありませんか。
Ans. 子どもを持つ親は、実は毎日どこに行こうか、何をしようかと考えています。子どもが飽きないような、かつ自然とふれあえるような、いろんな人としゃべれるような環境を探しているのです。これにはアダプト・プログラムがうってつけだと、母さんたちに教えてあげたい。町内の掲示板や児童館などの施設にチラシを貼るなどすれば自然と集まると思います。
第2部 基調講演
