アダプト・プログラム

アダプト・プログラムの事例紹介


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2016年6月

チームみたらい湾(山口県)

チームみたらい湾

ゴミ拾いをいかに楽しむかという発想

山口県光市のみたらい湾でビーチクリーン活動を行う「チームみたらい湾」。その活動は、非常にユニークでバラエティに富んでいます。
地元のイベントでは、オリジナル焼きそばの販売とあわせてゴミ拾いを実施。手作りのイカダでレースに出場した際には、海上のゴミを拾いながら見事に完走。マラソン大会では、自作したロボットの被り物でポイ捨て防止をPRしながら走りました。元旦の恒例行事となりつつある「海中ゴミ拾い」は、その名の通り、メンバーが海に潜って海底に沈んだゴミを拾ってくるというもの。地域のお祭の後には、環境美化ヒーロー「ミタライダー」に変身してゴミ拾いを行うこともあるのだとか。

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もちろん、日々の清掃活動や打ち上げも、全力で楽しんでいます。「活動を始めた頃はゴミが多くてやりがいがあったし、達成感も得られました。今はきれいになったのでそれが薄れてきて、『ゴミを拾おう』というだけでは人が集まりにくいこともある。だけど、『バーベキューやろう』だと15人くらい集まったりするんです」と話すのは、代表の田原秀敏さん。他のメンバーからも、「(チームの活動は)ゴミを拾うか遊ぶか。むしろゴミを拾いながら遊んでる」との声。「清掃活動」と「遊び」を組み合わせて「楽しいイベント」にしてしまおうという発想、「ゴミ拾いを楽しむ」という意識が、参加者の固定化や活動のマンネリ化といった課題の克服にも繋がっているようです。

気負わず自然体で、ゴミと向き合う

メンバーは地元の方が中心で、職業も年代も様々。土日は仕事や家族サービスという方もいるので、活動日を定めず気軽に、無理なく清掃を行っています。イベントなどで参加者を集めるときには、LINEで相談したり、Facebookで呼びかけたりと、コミュニケーションツールをうまく活用しています。

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取材に訪れたこの日は、10名ほどが集まって海岸のゴミ拾い。光市には海水浴場としても有名な室積海岸と虹ヶ浜海岸があり、ここ「みたらい湾」はややローカルな存在だといいます。漁協からほど近く、初夏のこの時期はアジやイカなどが釣れるのだとか。「ゴミ拾いのあとに釣りをして、打ち上げは釣れた魚でバーベキュー、なんて楽しみ方もできますよ」。

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清掃時は一人ずつ軍手をはめてゴミ袋とトングを持ち、砂浜の端まで往復します。夏はゴミの量が多く、冬は少なめ。釣りをする人が残していくゴミも多少ありますが、大半は漂着ゴミです。満潮時には砂浜のほとんどが海に沈むため、潮が引くと、ペットボトルや空き缶、食品容器やポリ袋、漁業ゴミ、海藻などが広範囲に残されています。九州で台風や水害があった際には、多量の流木が漂着したこともあったそう。

「たくさん落ちている短いプラスチックのパイプは、牡蠣の養殖で使われているもの。瀬戸内海ならではのゴミです」と、活動に参加している漁師の方が教えてくれました。漂着ゴミは湾の中だけのものではなく、いわば瀬戸内海全体で共有しているものなのです。

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清掃活動を始めた当初は、あっという間にゴミ袋がいっぱいになってしまうほどの量のゴミがありましたが、今は往復してもゴミ袋に半分たまる程度。ただし、中にはゴミ袋に入らない大きな物もあるので、手に抱えて運んでいきます。ゴミ拾いのペースは基本的に自由で、テトラポッドの奥まで入り込んでゴミを拾っている方もいれば、シュノーケルとフィンを装着して海の中へゴミを探しに行く方の姿も。

波打ち際を歩きながらゴミを拾っていた田原さんが、「以前、海岸清掃をしている方から『海流調査の瓶(ボトルメール)を見つけたら一人前だよ』と言われたんです」と話してくれました。いつか出会えることを期待していますが、この日も拾った空き瓶に何も入っていないのを確認して、どこか残念そう。参加者それぞれが自分なりに楽しみながら、真剣に、ゴミと向き合っています。

踏み出した一歩から広がる活動の環

活動の発端となったのは、2年ほど前、田原さんが一人で始めた海岸のゴミ拾いでした。「アースデイ(地球環境について考える日)のイベントに参加して、会場で出たゴミの少なさ、環境意識の高さに感動。自分にも何かできないだろうかと考えたのがきっかけです」。当時、田原さんのお店の目の前に広がる「みたらい湾」の海岸には、漁業で使われるロープをはじめとする漂着ゴミなどが散乱していました。そこで、「みたらい湾をきれいにしよう会」として、一人で砂の中に埋まったロープを掘り出すことからスタートしたのだそう。
その活動の様子をFacebookで発信したところ、共感して参加してくれるメンバーが少しずつ増えていきました。その後、光市の「環境美化ボランティア・サポート事業」への団体登録を契機に、「チームみたらい湾」という正式名称も決定。今ではFacebookからの繋がりのほか、地元の商工会議所を通じて参加するようになった方も多いとのこと。あるメンバーは、活動を始めた当初の田原さんについて、「一人で新しいことを始めたから、変わり者扱いされているところもあった」と話します。それでも地道に行動し続けていくうちに、周囲の理解も次第に深まっていったそうです。
日々の活動やイベント参加の様子は、写真や動画で積極的に発信し続けています。地元のFMに出演したりやテレビの取材を受けたこともあり、多様な場で活動をアピール。一緒にみたらい湾をきれいにしてくれる仲間を増やしていくことはもちろん、他の場所でも環境美化を意識してもらうきっかけになれるようにと、メンバーの行動力はとどまるところを知りません。

行政と連携し、助成制度なども効果的に活用

光市からは、ゴミ袋、手袋、トング、チーム名の入ったのぼりなどの支給を受けていているほか、集めたゴミの回収も担当してもらっています。「市の助成を受けてからだいぶ動けるようになったので、すごくありがたいですね」と田原さん。ゴミ袋が必要なときや回収を依頼するときには、担当者のところへ足を運んでいます。「電話でもお願いできますし、活動内容は書面で提出しますが、それだけでは伝えきれないこともあるので。直接行って顔を合わせて話すようにしています」。
その際に市の担当者から紹介されたのが、食品容器環境美化協会のアダプト助成制度。2015年度の助成金を活用し、チームのロゴが入ったTシャツと帽子、清掃用具を入れておく倉庫、ゴミ置き場を揃えました。特に重要だというのがゴミ置き場で、海ゴミ特有の臭いのため、集めたゴミを袋のまま置いておくとカラスに荒らされやすく、困っていたそうです。そこで、ゴミを置いておけるスペースを手作りで設置しました。材料費の都合でカラス除けのネットまでは購入できなかったため、漁業用のネットで代用するなどの工夫をしています。「ゴミ置き場が小さいとすぐに回収に来てもらわないといけないので、たくさん入るようにできるだけ大きく作りました。それでも夏場はすぐいっぱいになってしまいますが、冬場なら2ヶ月分はためておけます」。

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他にも、ゴミ袋のアートプロジェクト「GARBAGE BAG ART WORK」のデザインゴミ袋や、「海の日ごみゼロアクション」のオリジナルゴミ袋の無料配布を活用しています。経費の面で助かるというだけでなく、そこに遊び心があって、ゴミ拾いに興味がなかった若者にも「いいな」と思ってもらえるデザインであることがポイント。「みたらい湾で拾ったごみはリサイクルに回せず埋立処理されるので、分別をしなくてもいいし、どんなごみ袋でも回収してもらえるんです。ただ、ごみの種類や回収する自治体によっては、指定のゴミ袋でないと受け付けてもらえない場合も多い。もっとこういう試みを広めていきたいんですが、そこが難しいですね」。

今後の目標のひとつは、子どもたちへ活動を広めていくこと

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昨年は近くの小学校から、地域の達人を取材して発表するという授業のオファーがありました。2年生の子どもたちにチームの活動をパネルで紹介、海岸の清掃活動も体験してもらいました。「子供たちと一緒に活動したのは楽しかったし反響もあったので、またやっていきたい」と田原さん。子どもたちへの啓発活動は非常に大切なことだと考えています。「このあいだ地元のお祭に行ったら、授業で会った小学生が声をかけてくれたんです。嬉しいですよね。そうやって覚えてくれている子は、ゴミをポイ捨てするようなことはしないでしょうから」。今後は、小学校の行事として行われているゴミ拾いで定期的に活動紹介をしたり、子どもたちが集まる地引網のイベントでゴミ拾いを呼びかけたりできないか、検討しているところです。
あとは、「これからも楽しいイベントをどんどんやりたい」というのがメンバー共通の気持ち。みたらい湾で行う新しいイベントを考えたり、そこにゴミ拾いをいかに結び付けていくかというアイディアを練ったりと、今もあれこれ計画中です。これまで課題に直面しても、メンバーが知恵を出し合い、力を合わせることで乗り越えてきた「チームみたらい湾」。これからも、まずは自分たちが楽しく活動を続けながら、その取り組みの輪をもっともっと広げていきたいと考えています。

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