アダプト・プログラム

アダプト・プログラムの事例紹介


AP

2018年6月

天浜線に新しいアダプト『花のリレー・プロジェクト』がはじまります

浜松市をもっと元気にするために

浜松市をもっと元気にするために

 静岡県浜松市は、静岡県西部に位置する政令指定都市。人口・面積ともに静岡県最大の市で、古くから製造業の町として知られています。しかし近年、市の主力産業だった製造業が海外へ進出。地域から少しずつ、元気がなくなっていきました。「このままではいけない」と考えた静岡県知事は浜松市の観光ポテンシャルに注目。グルメや歴史など多彩な観光資源を持つ浜松市を、観光で盛り上げることはできないかと考えたのです。地域を盛り上げるには、地域をよく知る人の力が必要です。信用金庫であれば地元に密着して継続的な活動ができるのではないかと、浜松信用金庫の御室理事長に相談。ここからプロジェクトが動き始めました。

 地域の力で浜松市を盛り上げ、訪れた人が「また来たい」と思える場所にしたい…。浜松信用金庫が着目したのが、天竜浜名湖鉄道でした。天竜浜名湖鉄道は、掛川市の掛川駅から浜松市天竜区の天竜二俣駅を経て、湖西市の新所原駅に至る全長67kmの鉄道。「天浜線」の愛称で親しまれており、地元の人の交通手段として利用されています。運行は1時間に1本。沿線には、女性に大人気のマリメッコに囲まれる都田駅や、ミカンの産地として知られる三ヶ日駅など、見所やグルメが点在しています。

 菜の花列車で知られる千葉県のいすみ鉄道では、多くの人が電車を降りて花壇の写真を撮っていました。沿線に一年中奇麗な花が咲くようになれば、地域の人にも喜んでもらえるし観光客の集客につながると考え、沿線に花を植え、多くの人に来てもらえる鉄道ブランドに育てようという方向性が決まりました。

「ここまでやるか?」という驚きが大事

 浜松信用金庫では、この活動を大規模なプロジェクトとして進行することを決めました。「利益は地域貢献のために使う」という信用金庫のポリシーもありますが、もっとも大きかったのは御室理事長の「やらまいか」精神。理事長の肝いりにより信用金庫内に設立した「はましん地域振興財団」から、活動の舞台となる天竜浜名湖鉄道に専任職員が出向。1億円のスタート資金も用意しました。浜松信用金庫から天竜浜名湖鉄道に出向中の伊藤文俊さんは、「どこでもやっている地域貢献ではなく、うちにしかできないことがやりたい。理事長直々に『骨は拾ってやるから、徹底的にやれ』と言われて、火がつきました。前例がないと、燃えるタイプなので」と笑います。

 実はこのプロジェクト、浜松信用金庫の主導で始まったため天竜浜名湖鉄道としては寝耳に水。話を持ちかけられたときには、心底驚いたと言います。「主要駅のホームにプランターを置く程度だと思っていたら、沿線全部がターゲットだと言うんです。正直、規模が大きすぎて実感がわきませんでした」と、天竜浜名湖鉄道の植田社長。正直「なぜ、うちに?本当にできるのか?」という戸惑いもあったそうです。しかし、「いつもお世話になっている地域に、心に残る貢献をしたい。企業として社会に恩返しをしたい」という浜松信用金庫側の熱意に押され、全面的な協力を約束。二社が共同して、動き始めました。

アダプト勉強会に参加する浜松信用金庫のみなさん (アダプト勉強会に参加する浜松信用金庫のみなさん)

 しかし、浜松信用金庫も天竜浜名湖鉄道も花について全くの素人。何を植えればいいのか、どうやって植えればいいのかも分かりません。そこで花の専門家である「はままつフラワーパーク」に相談することにしました。浜松信用金庫には、企業内クラブとしてブラスバンド部があります。ブラスバンド部が、はままつフラワーパークで演奏することもあり、実務担当者同士のつながりはありました。その「ご縁」を頼り、同パークの理事長であり日本初の女性樹木医である塚本こなみ先生に、プロジェクトの内容を説明したのです。
「天浜線沿線に花を植えたいと聞き『ラッパ水仙を植えてはどうですか?』とアドバイスしました。そうしたらこの人たち、そのまま種苗屋さんに『ラッパ水仙の球根をください』と買いにいっちゃった。そして『断られました。どうしたらいいですか』って。決算書や数字を相手に仕事をしてきた信用金庫の支店長さんたちが、花に詳しいわけがないですよね。あまりにも一生懸命だったので、プランを丸ごとお引き受けしました」と塚本先生。塚本先生の紹介で、英国園芸研究家の吉屋佳子先生も参加。世界的に著名な先生たちの夢のダブル・プロデュースが実現しました。塚本先生は現地に足を運び、車窓風景を確認するために列車にも乗車。「景観に合う場所」「地域の動線と重なっている場所」「大勢の人に見てもらえる場所」「安全に作業できる場所」「日当りや土壌が花に適している場所」という条件を基準に候補地を絞り、候補地ごとに植える花を決めました。
メインとなるのは、日本の原風景をイメージさせる、桜・アジアイ・ユキヤナギ・山吹・ハクモクレン・ラッパ水仙など。世話がしやすく、水やりの手間が少なくてすむものが選ばれています。特に天竜浜名湖鉄道の本社がある天竜二俣駅前は、塚本先生プロデュースの本格的な庭園を造成する予定です。

塚本こなみ先生 (塚本こなみ先生)

庭園予定地(天竜二俣駅前)  (庭園予定地(天竜二俣駅前))

継続するためのシステムとして「アダプト・プログラム」を導入

 植栽は「植えて終わり」というものではなく継続的な作業が必要です。こういった作業を地域で行うシステムとして導入されたのが、アダプト・プログラムです。「活動を継続するためにどのようなアプローチ方法があるのか『しんきん経済研究所』に相談したところ、『長野県諏訪市に、15年以上諏訪湖の清掃活動を続けている団体がある。その団体が取り入れているシステムが、参考になるのではないか?』とアドバイスを受け、さっそく長野県に出向き、諏訪湖アダプトを視察。食品容器環境美化協会のことや、アダプト・プログラムの趣旨を教えていただきました」。その後、食環協をはじめ、中海・広島などアダプト先進地にも視察。「行政主体・民間参加型ではなく、民間が先導して行政に協力してもらう形で進めよう」ということになったそうです。

 学校や企業にプロジェクトの趣旨とアダプト・プログラムへの参加してもらうには、プロジェクトにかける思いを直接伝えるのが確実です。1件ずつアポイントをとって担当者に説明するのですが、「○○駅周辺はうちの学校で対応したいです」と積極的に参加を表明してくれる学校も。地元企業も、日ごろお世話になっている地域のためにと、快く承諾してくれました。地域で活動している「花の会」も協力的で多くの団体が参加してくれました。信用金庫のつながりからロータリークラブやライオンズクラブにも協力をあおぎ、まさに「民間が主体となり、地元住民を巻き込んだシステム」が形成されたのです。

 「管理が行き届いた場所にはポイ捨てされにくい」ことから散乱防止や環境美化としても注目しています。清掃活動の際に出るゴミをどうするかは、現在行政と調整中。静岡県が実施している「しずおかアダプトロード・プログラム」や他県の事例を参考にしながら、継続しやすいシステム作りを検討中です。

 「今回のプロジェクトの醍醐味は、美しい景色を作ることです。参加した人に満足度が得られるような活動でないと、一回限りの参加で終わってしまいます」と塚本先生。作業完了後の達成感と満足度、周囲からの認知度が、活動継続の鍵となるようです。

一過性の盛り上がりで終わるのではなく、未来永劫続く活動に

 2018年6月6日、はままつフラワーパークにて「天浜線 人と時代をつなぐ 花のリレー・プロジェクト」のキックオフイベントが開催されました。平日にも関わらず、協力企業や花の会メンバーなど約160人が出席。テーマ曲や、プロジェクトムービーもお披露目されました。食環協からはアダプトの全国概況を、広島アダプトや中海プロジェクトからアダプトの事例が紹介されました。湖西市の田中伸弘副市長は「このプロジェクトによって天浜線のさらなる魅力が創成できれば、インバウンド観光客の増加にもつながります。一過性の活動に留まることなく、末永く継続される事業になることを期待します」と挨拶。浜松東ロータリークラブのIM実行委員長からも、アダプト・メンバーズを代表して「きれいな花が咲いているから、列車に乗りたいという人が増えれば、地域振興につながる。地域住民が一体となって協力し楽しく活動していきたいです」と決意表明をいただきました。

 具体的な活動は今年の9月から。鉄道でつながる絆がどのように繋がっていくのか、期待が高まります。

キックオフイベント

キックオフイベント

 (キックオフイベント)

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