アダプト・プログラム

アダプト・プログラムの事例紹介


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2016年7月

栃木駅掃除の会(栃木県)

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月に一度、栃木駅で早朝の清掃活動


栃木県の南部に位置する栃木市。市の玄関口である栃木駅で、毎月第1日曜日の朝6時半から清掃活動を行っているのが、「栃木駅掃除の会」の皆さんです。 取材に伺ったこの日も、早朝にも関わらずたくさんの方々が集まっていました。若い方から年配の方まで年齢層は幅広く、小さな子どもたちの姿もあります。 参加者がつけているのは、会の名前と、栃木市のゆるキャラ「とち介」がプリントされたビブス。子ども用の小さなサイズもあり、蛍光色なので遠くからでもよく目立ちます。「お揃いのビブスは参加者の安全面を確保するだけでなく、心も揃えてくれます」と、代表の狐塚さん。食品容器環境美化協会のアダプト助成制度に申し込み、2015年度の助成金でビブス20枚を作りました。その後、栃木市の市民活動推進事業の補助金を活用し、更に枚数を増やしたそうです。それでも、この日は「今までで一番の参加人数」ということで、ビブスが足りなくなるほど。

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集合場所には、班の番号が書かれたプラカードと、トングや箒などの清掃用具を準備しています。活動は班に分かれて行うため、参加者はその場で好きな班を選び、列をつくります。まずは初参加の方の自己紹介、そして班ごとの清掃エリアなどの説明のあと、ゴミ袋を持って移動。駅の北口を中心に、周辺の道や公園で、ゴミ拾いや掃き掃除を行います。 会の活動について、狐塚さんは「掃除そのものが目的ではない」のだといいます。「掃除から学ばせてもらうことは非常に多いんです。参加するのには色んな動機があっていい、けれど掃除を終えたあとには、何らかの満足感や気付きを持って帰っていただけたら」。

ゴミを捨てない心を育てるということ

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清掃が始まると、大人はもちろんのこと、子どもたちも軍手やトングを使い、積極的にゴミを拾っていきます。駅のロータリーは一見とてもきれいですが、実際には、タバコの吸い殻をはじめ様々なゴミが落ちているそう。「きれいなところだと、ゴミは目立つ場所には捨てられていないんです」と狐塚さん。物陰に隠すように捨てられていることが多く、コンビニのフードの串が花壇の土に深く刺してあることも。そういったゴミも注意深く探します。「たとえば自分でも捨ててしまったことがある人は、ゴミがありそうな場所が分かるわけです。それを『こういうところに落ちているよ』と子どもたちに教えてあげると、『ほんとうにある!すごいね』と。そのゴミを子どもが拾うのを見て、大人は自分がポイ捨てしていたことを反省できるんです」。 拾う立場になることで、自然と「どんな気持ちでこのゴミを捨てたのだろう?」「どうしてゴミを捨てるのだろう?」と考えるようになり、気付くことがあります。そうして一度「ゴミを拾う側」になった人は、「ポイ捨てする側」になることはありません。清掃活動は、その場所のゴミを拾ってきれいにすることだけではなく、きれいでゴミを捨てにくい環境をつくること、そして、ゴミを捨てない心を育てることでもあるのです。「ゴミを拾って、私たちの“良い気持ち”を落としていきたい。今までゴミを捨ててしまっていた方も、その気持ちに気付いて心を改めてくれたらいいなと思います」。

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終了時間が近づくと、集めたゴミを手に、参加者が次々と駅へ戻ってきます。最後まで公園に残って掃除を続けていたご夫婦にお話を伺うと、お隣の小山市にある自宅から車で20分以上かけて来ているのだとか。栃木市でお店をやっていて、お客さんの中に掃除の会のメンバーがいたことがきっかけとなり、昨年の12月頃から参加しているそうです。「今日はこれから小山で町内の掃除があるので、終わったらすぐ帰らないと」と、笑顔で話してくれました。 集合場所では、清掃が始まる前より、さらに人の数が増えているようです。地元のサイクリング協会の仲間だという方々は、サイクリングの帰りに清掃活動を見かけて、飛び入りで参加してみたとのこと。こういった「誰でも気軽に参加できる」雰囲気も、会の活動をこれほど活気のあるものにしている一因なのでしょう。

自分たちを育ててくれた地元をきれいにしたい

「栃木駅掃除の会」が活動を始めたのは2年ほど前。狐塚さんは、宇都宮などで清掃活動に参加するうちに、「どうして生まれ育った地元でやらないのだろう、まずは地元をきれいにしていきたい」という思いが強くなったといいます。会の立ち上げ当初から一緒に活動している臼井さんも、「外部に行ってやることも重要ですけれども、学ばせてもらったことを地元に持ち帰ってきて、色々な方たちに知ってもらったり、掃除することで地元に貢献できれば」という思いがあったそうです。 初回の参加者は、2人を含めてたったの3人。そこから、「Facebookを通じて仲間が増えたり、他の場所で清掃活動に参加した際に自分たちの活動を紹介したり、地域でイベントがあると行ってみたり。人とのご縁があって、参加者が増えてこうして活動できています」。 また、行政の協力にも本当に助けられているといいます。現在使用している清掃用具やゴミ袋は、栃木市のアダプト制度で提供してもらっているもの。「1年目は道具もすべて自分たちで用意して、ゴミ袋も協力者の方に貰ったりしていました。2年目になってようやく、補助金なども通って備品がある程度揃ってきました」。 ゴミの回収も市にお願いしています。清掃活動で集めたゴミは、その場で缶・びん・ペットボトル・可燃・不燃などに分別。決められた場所に置いておいて、翌朝、市役所へ電話で量などを連絡しているそうです。参加者の方々が分別を行っている傍らには、使い終わったゴミ袋を一枚一枚ていねいに畳んでいる、臼井さんの姿が。「ゴミ袋は再利用しています。そうしないと、自分たちが使った袋が新たなゴミになってしまうので」。道具を大切にすること、そして、ゴミを拾うだけでなく出さないようにすることを、いつも心掛けています。

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他の団体と手を携えながら

栃木駅掃除の会の特徴のひとつといえるのが、他の団体との連携です。県内の他の地域で掃除を行っている団体とは、お互いの活動に参加しあって、交流を深めています。また、中には掃除というジャンルを越えた繋がりも。たとえば現在は、栃木市のゆるキャラ「とち介」を応援するため市民が立ち上げた、「とち介で栃木を元気に!実行委員会」に加わっています。この日は委員会のメンバーが掃除の会の活動に参加し、活動が終わったあとには、一緒に「とち介」のPR運動を行いました。「他の団体とは、お互い持ちつ持たれつ」だという狐塚さん。「やっぱり掃除はやってみるのが一番だと思うので、参加していただくひとつのきっかけになれば」。 お揃いのTシャツを着て参加されていた、「蔵の街花火大会」実行委員会の方にもお話を伺いました。市民ボランティアだけで運営している手作りの花火大会で、掃除の会ともメンバーが重複しているのだそう。それぞれの団体がお互いに協力しながら、良い影響を与えあっているように見えますが、「今のように連携がとれるようになってきたのは、栃木駅掃除の会が活動するようになってから」なのだといいます。「こうやって繋いでくれる方がいないと、なかなか(各団体の)足並みが揃わない部分はあります。市内には他にも清掃をしているグループはいるし、実はこの場所でも週に何回かはやっているんですよ。今後はそういう、目立たなくても人知れず活動している人たち同士も声を掛け合っていけたら、もっともっと良くなると思います」。 さまざまな団体が手を携えることで、個々の活動にもプラスとなり、地域全体も盛り上げていくことができる。掃除の会も、そんな地域の活性化の一端を担っているのです。

思いを繋げ、活動をさらに良いものに

栃木駅の周辺は、元々きれいな場所ではあったということですが、今は、活動を始めた頃よりも更にゴミが少なくなりました。けれど、市内にはまだ「山のようにゴミが捨てられている場所もある」といいます。「ここで活動に参加してくれた人が、それぞれ自分の地域に持ち帰って、今度は市内の色んな場所で活動をしていってもらえたら」と狐塚さん。市の中心である栃木駅から活動の輪を広げて、栃木市全体を良くしていくことが、今後の狙いの一つです。 そしてこの活動を、「私たちが自己満足だけで終わらせてはいけない」「ずっと続けていけるようにしたい」と語る、狐塚さんと臼井さん。これからの大きな課題は、「ゴミを捨てないことを子どもたちに伝えていく」ということです。子どもたちのゴミに対する理解を深め、同じ気持ちを持ってもらいたい。そして、この活動を引き継ぎ、更に良くしていってもらいたい、と考えています。

<団体概要>

プログラム名 栃木駅掃除の会
関連ページ 食環協HP-団体紹介(リンク)

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